
月刊アフタヌーン(講談社)にて、『宙のまにまに』を連載中の
柏原麻実さんの同人誌です。
かつては学生たちで賑わっていた喫茶店・ランプは、大学の移転に伴い、訪れる人がまばらな状況が続いていました。そこへ、可菜絵という女子高校生がアルバイトに来るようになると、少しずつお店が活気づくようになります。ただ、給料をろくに受け取らず、代わりにお店のカフェグッズばかりを欲しがることを不思議に思ったマスターは、彼女に働こうと考えた理由を尋ねます。その問いに対して可菜絵は、父親との思い出を語り始めます。
派手さはありません。登場人物は少なめで、背景やベタ入れも必要最低限といった印象です。ただ、作品としてのシンプルさや、作中に漂う静謐さがとても心地好く感じられます。それが、この作品を気に入った最大の理由です。
同人誌として発行されたのは2002年末のことですが、巻末のコメントには、「当時、漫画を描き続けるかどうか悩んでいた」とあります。もちろん、一読者である自身が当時、そのような事情があったとは知る由もなく、ただただ「好い作品なぁ」などと思ったのを覚えています。それは、この本に込められた”想い”を、何とはなしに感じ取っていた所為かも知れません。
『宙のまにまに』とは全く雰囲気が異なりますが、漫画家・柏原麻実さんの第二の原点として、記憶に留めておくべき作品だと思います。