
©:入江亜季 二グロス電燈 1998
マフラム家の一人娘ジルは、両親の旧友であり、初恋の人でもあるホトランカンの置き土産の猫を亡くし、大きな喪失感を感じています。彼女の父親の秘書であるハロルドは、そんな彼女を心配しながら、誰よりもジルのことを大切に思っています。
そんな折、10年ぶりにホトランカンが旅から戻って来ます。しかし、タイミング悪く入れ違いになってしまったジルは、ハロルドと共に彼の姿を探し求めます。ホトランカンの代わりに、二人は夜の街で不思議な少年オーラと出会います。彼はホトランカンの義理の子供で、一緒に旅をしていた、とジルたちに打ち明けます。
ホトランカンに憧れていたジルは、オーラを羨むうち、行き違いでハロルドと喧嘩をしてしまいます。しかし、オーラと話をするうちに、ジルは次第に自分の本当に気持ちに気付いて行くのでした……。
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ジルを中心に、マフラム家に関する様々な人物が交錯する物語です。時間や場所が頻繁に転換しますので、頭の中でしっかりと人物やストーリーを整理しながら読む必要があります。複雑である分、少々読み手を選ぶ作品かも知れません。
興味深いのは、人と人との多様な結び付きが描かれている点です。その間には、憧れや思慕、友情や義務感、そして不安など、様々な感情が介在しています。そのような人物同士の感情を上手く絡めながら物語を進めている、という印象を持ちました。
古めの作品ゆえに、多少、未成熟な部分はありますが、奥付で「ページ数が増えてゆく」「描かずにはいられない」「学校をサボって描いた」と記されている通り、描き手としての思い入れと勢いを強く感じさせる作品でした。
ちなみに、ストーリーは異なりますが、『群青学舎』の第11話「赤い屋根の家」(月刊コミックビーム2006年9月号掲載/単行本3巻に第20話として収録)は、キャラクターの名前や設定がほぼ同一であることから、『てのひらの虹』が原型になっているものと考えられます。