
©:入江亜季 にら 2001
入江亜季さんの同人作品です。
【梗概】
晃平には、少し歳の離れた姉がいる。容姿優れ、器量も良いにもかかわらず、彼女は病で長く入院を続け、余命は数年と宣告されている。そんな姉の病室に足繁く通い、晃平は姉弟として大切な時間を過ごしていた。ところが、”ある日”を境にして、束の間の平穏で幸福な日々にも終わりの時が訪れようとしていた……。
【解説】
若くして死を運命付けられた姉の姿を、弟の目を通して描いた作品です。
二人が初めて会う場面から始まり、終わりの時を迎えるまで、物語の殆どが、病院を舞台に進んで行きます。その間、晃平は小学生から中学生、そして高校生に成長するのに対し、姉はあらゆる変化から取り残されたような療養生活を続けています。作中、しばしば病室着姿が描かれていますが、「白」は病人としての彼女の象徴する色です。
しかし、一度だけ、晃平が同級生から借りて来た「黒」のセーラー服を身に纏うシーンがあります。憧れだった制服を着た姉は、恰も、失った長い時間を取り戻すかのように、生き生きとした姿を弟に見せます。晃平が述懐するように、その時の彼女は病人ではなく、まるで別人のようです。もっとも……それが、彼女の本来あるべき姿だったことは、想像に難くありません。
上記のように、「白と黒」「生と死」といった対照的な要素の絡め方、理想的な女性でありながら死を免れ得ない姉というキャラクター、人物たちが見せる刹那の表情の表現、そして美しも儚いストーリーが、この作品を印象付けている諸々のファクターであると感じました。
終わり近く、意識不明の状態だった姉が静かに病室から出て来て、待合椅子で眠っている晃平にキスをする場面があります。一言も台詞がなく、僅か2ページなのですが、美しく、ファンタジックで、込められた意味の多い、印象的な場面でした。
悲しい雰囲気ながら、本当に好い作品だと思います。