「うさぎ装束」

リュウ7
©:徳間書店
「月刊COMICリュウ」2007年7月号掲載の作品です。

【梗概】
とある街では、原因不明の奇病が流行していた。その病に罹った者は、”ウサギ”のような生物を目にするようになり、やがて、当人が存在していた記憶と共に、ひっそりと消え去ってしまうという。静かに、そして着実に感染が広まる中、病に対する免疫を持つ少年・菜生は、同じく免疫保持者の”ハカセ”が処方する薬を使い、親友の真貴を病から守ろうとする。しかし、菜生と真貴、二人の少年の間に横たわる”心の溝”が、予想しなかった結果へと二人を導く。その結末とは?

【解説】
寂れつつある街、原因不明の奇病がもたらす不条理な死、哀しげな瞳をした”ウサギ”たち……随所に退廃さが漂う作品です。キャラクターたちの感情表現を抑えつつ、実に淡々と、少年たちが迎えた不可思議な出来事の顛末が描かれています。

作品のポイントは、二人の少年の関係です。免疫を持っているために、”ウサギ”を目にしていても死ぬことはない菜生。一方、真貴はといえば、薬を飲み続けて、どうにか病気の進行を食い止めているに過ぎません。初めから既に、二人の間には埋め難い、大きな隔たりがあります。それでも、友達としてお互いを理解し、より良い関係であろうと努力します。しかし、相手を思い遣る余り、お互いに重ねた嘘が、結果的に、二人を別つ決定打になってしまうのは、何とも皮肉な話だと思います

作中、真貴がふと「寂しい」と口にします。それは、人と人とが理解し合う根本的な難しさを、端的に表現しているような気がします。また、「友達と一緒にいたい」と願いつつ、一方の死によってそれが叶わなくなった菜生と真貴の関係は、何処か、ジョバンニとカンパネルラを思わせました。万人受けするような内容ではありませんが、繊細で、文学的なファンタジー作品です。

掲載誌は、書店で取り寄せることができます。在庫のあるうちにどうぞ。

 | BLOG TOP |