『群青学舎 2巻』

群青学舎2
©:入江亜季 エンターブレイン 2007
月刊コミックビーム連載中の掌編漫画作品『群青学舎』の第2巻です。王位を巡って争う王族たちの愛憎を描いた意欲作「北の十剣」ほか、5作品計9話が収録されています。

2巻のお勧めは、やはり「北の十剣」です。クーデターにより、肉親を叔父に皆殺しにされ、都を追われながらもただ一人生き残ったグゼニア王女が、敵であるはずの甥・ルーサーの助力を得ながら、王位を取り戻すまでがドラマティックに描かれています。

これまでで最長の5話構成で、時間を掛けて丁寧に構想された作品、といった印象です。複雑な感情の入り混じったグゼニアとルーサーの関係が、時間と共にの変遷する様が、この作品の読みどころです。お互いに惹かれ合いながらも、立場の違いゆえに交わらない悲しい運命……だったはずが、一筋縄では終わらない所が、この作品のユニークなところです。気丈なお姫さまが時折見せる、”恋する者の弱さ”には、何とも心を擽られます。

「ニノンの恋」は、主人公のニノンが大変可愛らしいキャラクターです。入江作品の特長として、子供キャラの快い存在感があるのですが(『コダマの谷』のマージを思い出していただけると丁度良いでしょう)、恋する女の子の躍動感が上手く表現された作品です。

「時鐘」は、”死”をテーマとした少々重い雰囲気の作品です。始めにウサギの、次いで人の死に触れた少女が、”死”をどのように受け止めるべきか戸惑い、最後は性急に”生”を生み出そうとする極端さが、不思議な読後感を醸し出す作品です。

「彼の音楽」は、音楽が好きなのに楽器の扱いが下手な少年のお話。オーケストラでなかなか居場所を見つけられない寂しい状況から、音楽の楽しさに目覚めるまでが描かれています。音楽が流れているシーンの、”空気”の表現が印象的です。

そして最後の「続ピンク・チョコレート」は、1巻収録の作品「ピンク・チョコレート」の続編。惚れ薬がきっかけで、実際に恋仲になった都さんと春日くんの後日談です。都さんが時折見せる女性らしさと、奔放さのギャップが微笑ましい作品です。

1巻同様、作者の内にある世界の奥深さと、抽斗の多様さを感じさせ、読者の好奇心を十分に、あるいは期待以上に満たす充実した内容です。基本的には1話完結の短編形式ですが、「北の十剣」のような中篇作品や、「続ピンク・チョコレート」の続篇の登場もあり、物語の更なる多様性、巻ごとの連続性が見られた点は、興味深いファクターであると思います。

余談ながら、本の装丁もまた秀逸ですね。こういった、基本ながら大切な点に対するこだわりは、作品を大切に扱う出版社の姿勢が良く出ていて好感を持ちます。引き続き、次巻にも期待しています。

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