
©:今村陽子 国立少年 2001
戦の時代、人々の陰には山伏の身なりをした忍びたちがいた。彼らは、里の子を攫っては過酷な修業を課し、生き残った者だけを同士として迎え入れて勢力を保っていた。一味に身を置く、主人公の長目もまた、子供の時分に攫われ、冷酷かつ優秀な忍びとして育てられた過去を持つ。そんな彼が数々の苦難の中を生き抜き、戦の終わりと共に故郷へ戻ることを許される。果たして、彼は人間としての本来の自分を取り戻すことが出来るのだろうか?
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国立少年の作品にはシリアス路線とユーモア路線とがあり、さながら陰と陽のように内容や雰囲気が対照的なのですが、『天狗の里帰り』は、『クラウン』と並ぶ前者の代表的作品です。
忍びのシビアな世界を描いているだけあって、残酷な、あるいは凄惨なシーンが多いのが特徴です。修業で溺死しそうになる、反抗して折檻される、仲間だった抜け忍の始末、そして敵との戦い……長目が人間らしい心を喪失し、「生ける屍」として生きた前半部は、非常に雰囲気が重いです。
後半部は、里帰りを果たしたものの、心焦がれた地に立っても何ら感慨が湧かない自身に戸惑う、「人間」としての長目が描かれています。ただ、拾い育てた弟分である小丸の純真さと、かつて幼馴染だった村娘おみねとの出会いが、長目に大きな影響を与えます。後半部は、彼の人間としての再生を綴った、情感溢れる内容になっています。
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前半部(32P)に比して、後半部(16P)はストーリーがかなり駆け足になっており、長目が人間らしさを取り戻す過程が性急に描かれている点が勿体ないのですが、それでもなお、表現したい内容は良く伝わって来ますし、演出面での完成度は高いと思います。大コマが何箇所かありますが、いずれも迫力があり、作品を印象深いものにさせている、と感じました。
ちなみに、忍者は後出の『鱗鱗羅羅』にも登場しますし、心を喪失した暗殺者というモチーフは、商業作品の『アノニマス』へと引き継がれています。そういった点では、作者のエッセンスが凝縮された作品とも言えるでしょう。