『猫とパンケーキ』

猫とパンケーキ
©:スイ  2008

ハインツは、手製のパンケーキを楽しみにしながらのんびりと余生を送っている老紳士。ところが、ある日、窓からの侵入者に焼きたてを盗まれてしまいます。その日を境に、パンケーキを求めて足繁くやって来るようになる謎の少女。話を聞くうち、彼女の境遇に同情を覚えるようになったハインツは、ある提案を少女に持ち掛けるのですが……。

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読み切り短編作品です。今回は、過去の物語にあったような、沈み込むような精神的重さはなく、肩を楽にして読める内容になっています。実際、人物たちに柔和な表情が多いです。また、窓から出入りしては、パンケーキを口にして去って行く少女の姿が、猫のようで何とも可笑しいです。

ただ、「鳩」の作品らしく、人物たちの抱えている過去には、拭い難い物悲しさが漂っています。時折、亡き妻の思い出に浸る老ハインツ。兄を亡くし、孤独なストリートチルドレンとして生きている少女。しかし、パンケーキを切っ掛けに知り合った彼らが、いつか訪れるであろう”死”に向き合いながら、今の”生”を大切にしようとするラストシーンが、暖かくてとても好いと思います。

インパクトの面では、従来の”哀しい系”の作品には及びませんしストーリー面にも、まだまだ掘り下げる余地が十分にあると思います。ただ、明るめの作品という、新しい抽斗の存在を示した点は意義深いですし、準備期間の短さを感じさせない安定感があり、安心して手に取れる作品に仕上がっていることは確かです。

いたく個人的な願望ですが、「老紳士と猫少女」はなかなか面白い取り合わせと思います。続編を期待します。

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