声にコンプレックスを持ちながらも、歌うことに興味を持っていた田辺さんは、高校入学を機に合唱部に興味を持ちます。ひょんなことで入部したものの、部員はわずかに5名。廃部寸前の弱小合唱部が、部の存続を賭けてコンクールに出場するまでが描かれています。
学園モノの中でも、運動部と違い、類例の少ない合唱部を主題としている点がユニークだと思います。当初は、実力はおろか、部員の人数繰りや練習場所の準備にすら苦労する有様でしたが、様々な悩みを抱えつつも、少しずつ部として形になって行く過程が、読んでいてに実に楽しいです。
涙……はありませんが、笑いとユルさと繊細さが同居していて、全体的に明るいテイストで読み易いです。また、空間の表現や、本来不可視である音や雰囲気の表現に奥行きがあり、画面作りの上手さを感じさせる作品だったと思います。
ちなみに、小学館から刊行された短編集『花ボーロ』に原形となった同名の短編作品があります。併せて目を通すと、より楽しめることでしょう。